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作業写真





ピアノが工房に届きました。
3台買付した内の1台がこのブロードウッドです

 




フルレストアーのつもりで始めから入手していますので、早速部品を外しサイズや材料の事などを考え、どのメーカーの部品を使用するか決めて行きます。ハンマーヘッド、チューニングピン、低音弦などは独製と英国製を使用する事にしましたので早めに注文を入れておきます。

何の為か?分かりませんがチューニングピンの所に、ドーナツ状の赤いフェルトが入っています。



次にフレームを上る(はずす)にあたり、手前側にある木枠が邪魔しているのでその部分をはずさないとなりません。ネジではなく接着されてしまっているので、刃物で少しずつ切り込みを入れて切り離しました。
なぜ?この様な作りになっているのかは分かりません。
 
 












以前よりフレームを留めているネジが少ない事と、その位置にどういう意味があるのか?疑問に思っていましたが、解体作業を進めるにつれてそれが少しずつ分ってきました。
2番目の写真にある様、親板(側面の板)とフレームの隙間にくさび状の木が挟めてあり、それをフレーム側から固定する為にこの位置にネジが入っている事が分かり納得が行きました。また、ネジを緩めたりしている時に気づいた物ですが、ピン板と親板が何の接続(接着やネジ留め)もされていない作りで、先程のくさびとネジとでフレームの位置決めがしてある物でした。くさび自体は接着剤でしっかり親板内側に着いている為に、金居などで切って外すしかなく元型のまま外せません。そうなるとフレームを戻した時に位置出し出来ませんので後々見えなくなる箇所に印をつけたり、どの間が何ミリとか(写真下)控えてから外して行く事にします。

また他のメーカーと違い、フレームをピン板に木ネジで留めているのでは無く裏側からピン板を貫通してフレームに切ってある雌ネジに皿ネジで留める作りで、やはりネジの数は10本だけと少なめですが、通常の木ネジより強く締められる事と凹形状のフレームにピッタリとピン板が納まっていて、この本数でも十分な強度なのであろうと考えられます。







 
次にフレーム塗装ですが見ての通り曲面が多い為、ツヤ出し仕上げにした方が似合うと思いそうしました。この場合響板はツヤ消しにすると、弦とフレームの光沢がくっきりとするのでその様にします。フレームに金粉塗装をするのですが、赤みがあった方が綺麗かと思い、ステイン(染料)を少しずつ混ぜて様子を見ながら進めます。
かなり赤くなってしまいました・・・不安になり当社のスタッフや同業の調律師などに見せたら、外装もマホガニーだしこの位派手で丁度良いなどと言われ、この色のまま仕上げる事にしました。







 
響板の塗装で下塗り上塗りとウレタン塗料使用です。中央ロゴマークは残す為、マスキングをしておきます。裏側は刷毛でニスを塗ります。
又、写真により駒と交叉方行に響板が貼られているのが分かりこれも他社と違う所です。
 




外装塗装は、板目のマホガニー材をポリエステルツヤ出し仕様にします。
 




このピアノはさりげなく全体に象眼細工が入っていて、マホガニーとのコントラストがとってもおしゃれです。

BROADWOODのロゴは元々手書きによる物でしたので、時々頼んでいる先生に再生して頂きました。
 




フレームを戻して再メッキした綺麗なネジで組付します。



 
このピアノのアグラフには弦の番定(太さ)が刻印されていて、これなら消える事がありません。とても良いアイデアかと思います。他メーカーさんもこの様にしてくれると後々の修理の時に楽なんですが・・・。

 
写真は駒部分ですが、カットの形状がドイツ製と違いこれも面白いと思える部分です。
 


今回英国製と言う事で、現地のピアノ修理技術者より紹介してもらったWalling fordという町で低音弦製作をしているMartinさんにお願いしました。別のピアノの買付の為、英国南西部ウェールズに行った帰りに受け取って宿泊しているロンドンまで片手にぶらさげながら電車で戻りました。
 








チューニングピンと芯線は独製を使用です。
Martinさんの指示通りに元々の弦のサイズやアグラフから巻口など計ってメールしてはあった物ですが、さすが巻口が揃っている事と面取り加工が非常に美しく仕上がっていました。
 
冒頭にも書きました様にこのピアノの入手の決め手となりましたアクション形式ですが、レペテーションレバーの付いた物で、この形体から現地ではモダンアクションと言っています。まったく同じピアノで旧式のレペテーションレバーの無いアクションが載っている物もあり、こちらはハンマーの落下スピード自体は同様でもピアニシモでトリルを弾いた時などにもたつき感があり、アクション性能としては現代のアップライトとグランドの中間と言った感じの為、どんなに音と程度が良くても高性能なダブルスプリングのアクションが一般化している日本では受け入れられないと思い、今までは仕入れていませんでした。このブロードウッドは独シュワンダー社製のシングルスプリング(エラールシステム)アクションでしたので入手する事とした物です。
 
丸い所がローラーと言うタッチ感触を大きく左右する部品です。最近のピアノはここが合成皮革で製造されていますが、勿論この時代は皮製です。殆ど変形と消耗がない為オリジナルの物を使用する事としました。
 
ハンマーの接着前にダミーハンマーをシャンク(棒状の部分)に刺して上方向に50〜60mm位動かし、右・左に寄ってしまう物を薄い紙を挟めて直しておきます。業界では走りの修正と言います。


 


独レンナー社に特注製作してもらったハンマーヘッドを、オリジナルハンマーの取付角度を計ってその通りに穴あけしていきます。

 

ハンマー接着の後テール部分の加工をして、もう一度ハンマーレールに取付します。
 




ダンパーフェルトも全貼替ですが、ワイヤーの曲りがきつく取り外しに苦労します。もう少し緩やかにクランクをつけてくれればスムーズに抜けるんですが・・・これも?のひとつです。
 


写真は拍子木と言い、鍵盤の左右にある木製でブロック状の物です。このピアノの場合は鍵盤及びアクションの前後位置を決める役目もしている物ですが、アジャストが楽になる様にベーゼンドルファーを真似て後ろ側にキャプスタン(ネジ)を取付ました。
 


修理及び部品交換は全て出来ましたので、整調・調律を次に行います。
 
少々ハンマーフェルトを削ったほうが鳴りが良い為そうしました。
 


ケース(外装)、アクション、鍵盤、弦、響板、調律と全てが終わりました。
小型ながら良く響き、美しい外観を含めとても魅力的なピアノに仕上がったと思います。

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